】「自社栽培の安全・安心な『山田錦』だけを使った日本酒を届けたい」と話す、加西市の「ひょうご酒米処合同会社」の初田源三代表(76)。「酒米を日本酒にして販売することで収益性が向上し、自社の山田錦の価値も高まる。酒の販売によって、夢のある企業に育てたい。農業を雇用の生まれる魅力ある産業にしたい」と日々取り組んでいる。 管理を細かく記録、分析農薬65%減、化肥52%減 同社は、農地面積約16・6fのうち、約14fで酒造好適米・山田錦を栽培。今年1月に、六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画の認定を農林水産大臣から受け、自社栽培の山田錦だけを使用した純米吟醸酒の醸造を蔵元に委託した。酒類販売業免許を取得し、5月には純米吟醸酒「初」を発売した(1本720_g、税込み1800円)。「初」には、自らの名字のほか、酒造りに心を込めた「初心」の意味が込められている。 「農業の機械化などが進んでも、伝承されてきた農業の知識を忘れず、基本に戻ることが大切」と話す初田代表。 約60年の稲作経験を元に、竹をパウダーやチップにして牛ふんと混ぜた有機物での土作りや日照・通気性を考慮した植え付けなど、稲が快適に育つ環境づくりを行うほか、肥料の加減や病害虫の発生などを注意深く観察し、パソコンで栽培過程を数値化するなど、きめ細かい管理と分析を行っている。 その結果、農薬の使用量が県内の慣行栽培に比べ65%削減、化学肥料(チッ素肥料)も52%削減ができた。 女性客を取り込みたい こうして栽培された山田錦だけで造った日本酒・初は、試飲アンケートで得た女性のニーズを反映しており「今後は、酒の販売を強化し、東京の安全・安心に関心の高い女性も客層として取り込みたい」と話す初田代表。 加西市農政課は、「地域特産の山田錦を活用した6次産業化のモデルケースとして、期待も大きい」とエールを送る。(永井 康之)