■【加東市】日射制御型拍動灌水装置 宮野正幸さん 加東市山国でナス栽培をしている宮野正幸(みやのまさゆき)さん(63)は、拍動灌水装置を導入して給水作業の重労働を減するなど省力化を図っている。 宮野さんはナスを作り始めて2年目。1日3回を要する夏場の給水など大変な重労働を一人で行ってきた。 そんな時、宮野さんは所属する「たきのなす部会」の栽培研究会で、先進地事例として豊岡市のピーマン栽培に拍動灌水装置が使われていることを知り、加西農業改良普及センターの協力を得て、今年5月に装置を導入した。 天気に応じて流水量を増減 この装置は圃場への給水・止水を自動的に行うシステム。ソーラーパネルによる太 陽光発電で、送水ポンプとその制御装置を動かす仕組みだ。日差しが強い日には灌水量を増やし、曇りや雨の日は灌水量を減らしたり中止したりする日射制御型となっている。宮野さんは、2時間の日射で30分間灌水、そこから日射量に応じて変わるように設定している。 装置は直接、圃場内の貯水場所から水中ポンプで塩化ビニール管を通じて畑に送水するシンプルなタイプだ。ビニール管とつないだ幅1aのチューブを畝に沿って設置。チューブに20a間隔で開けた超微細な穴から水が点滴のようにぽたぽたと落ちる。これにより不必要な灌水や施肥の無駄を無くすことができた。 宮野さんは導入のメリットとしてナスの収穫量が格段に増えたことを挙げる。追肥も 粒状の硫酸カリウムを水で溶かして、貯水場所に投入するだけで、灌水と同時に行えるので、作業の効率化と肥料コストの削減につながった。 貯水場所への引き込みが地元水路からのため、地元が用水路の水を止めた時は灌水できないことがデメリットだ。 そのため、装置の監視に注意が必要になる。また、追肥は吸収しやすい苗の根元ではなく株元へ落ちるので、肥料の吸収速度が遅く、効果が出る のが遅れるという。 ナスは連作障害が出やすいが、装置導入後は圃場を変えて作付けできないなどの問題もある。それでも装置の導入コストを考えても省力効果は大きく、メリットの方が格段に大きいと感じている。 現在、水田22eのうち10eをナスに転作しているが、宮野さんは「今後は装置を増設し、ナスの作付面積をもっと増やしていきたい」と話す。 (玉井貴計)
西宮市段上町で農業を営む松山嘉次(まつやまよしつぐ)さん(76)は、地元の伝統野菜「大市ナス」の栽培に取り組んでいる。 このナスは明治時代に市内の大市地域で、油障子を活用した苗の早期簡易育苗法が開 発されて普及したもの。実は柔らかく、煮ても焼いてもおいしい。 だが、昭和10(1935)年ごろに病気がまん延したことから栽培面積が徐々に減 少。現在は市内で数軒が栽培を行う程度だ。 松山さんは10年ほど前から、このナスの生産に取り組み、JAの直売所で販売を始めた。当初は見た目が他のナスに劣る分、売ることに苦労したという。 現在では、地元の伝統野菜として、味とともに認知度が高まり、売れ残りがないほど好評を得ている。「他の農家にも栽培が広まり、栽培面積が増えることを楽しみにしている」と松山さんは話している。 (守屋貴幸)