ログハウスを交流の拠点に們們多可町加美区観音寺集落では、集落内にログハウスを建設したいという神戸大学の学生団体「学生流むらづくりプロジェクト木の家」を受け入れるとともに、学生たちと協力して観光資源の発掘や、集落の農産物を神戸市内で販売。学生の発想や行動力を借りながら、地域の情報を発信している。 「木の家」は「みんなの田舎をつくろう」を活動理念に、2010年9月に発足。集落の理解と協力を得ながら、現在、31人(男性19人、女性12人)の学生が会員となり活動している。木の家の活動拠点のログハウス建設のきっかけは、木の家の初代代表が学生サークルの知人からログハウスの良さを紹介され興味を持ったこと。建設場所は大学の教授から「観音寺集落が都市と農村の交流に理解と関心がある」と紹介されたことと、当時の区長で現在は集落の顧問をしている永井良昌さん(69)が受け入れに対して協力的であったことから決定した。活動内容はログハウス建設だけにとどまらず、月に1回程度は集落を訪れ、植林や林道、遊歩道の整備を行う他、多可町が実施する「菜の花エコプロジェクト」などの地元イベントに積極的に参加。観音寺集落の活動を学んでいる。団体の元代表・門田剛太郎さんは、「まず、私たちが地元との交流の基礎をつくり、そこへ都市部の方を招くことで、地域の活性化につながるようにしたい」と話す。また、受け入れ側の観音寺集落でも、営農組合を核に、ソバや地元産の「千のしずく米」の栽培や加工品などの特産品作りを進める他、学生たちとタイアップして販路拡大を図っている。その売り上げの2割は学生たちに配分していて、これが学生たちの交通費や活動費の一部になっている。交流を継続的に実施するには資金が必要になるため、学生たちの斬新なアイデアやパワー、感性を生かした取り組みが欠かせない。「交流は箱物を建てて終わりになってはいけない。現時点では夢だが、学生たちと農産物などを取り扱う会社を立ち上げ、5年後には1千万円を売り上げるようになりたい」と永井さんは目標を話す。
大都市に近い立地を生かして野菜栽培が盛んな明石市で、寺岡真利さん(26)は家族と協力しながら、キャベツや水稲などを生産している。幼いころから父の茂喜さん(59)の作業姿を見て育ち、「農業以外の職業に就こうと考えたことはありません」と話す真利さん。同年代の仲間たちが農業以外の道を選ぶ中でも、高校進学の際には農業の道を志し、農業高校へ進学。その後、農業大学校に進み、「キャベツの品種比較と株間調査」を卒業論文に選ぶなど、キャベツ栽培について積極的に学んだ。卒業後は、栽培技術や農業経営を学ぼうと他の農家で修業し、4年前に実家に就農した。現在は水稲2f、キャベツ4・5f、キュウリ20e、ブロッコリー40eなどを栽培。市場や直売所の他、加工所向けの出荷もしている。高校生のときにブラジルでの研修に参加し、海外の農業経営を学んだ真利さん。ブラジルの農業はとても大規模で、日本より安定した収入を得ていることを知り、帰国後は耕作放棄地を活用し、大規模で安定した農業経営を目指そうと考えるようになったという。「ただ、家族経営のままでの規模拡大は人手不足が問題になるので、新規雇用の受け入れなど将来を見据えた経営方針を考えながら、規模拡大を図れる経営者になりたいです。そのためには、努力を惜しまず、一つ一つ勉強しながら成長していきたい」と話す。将来、茂喜さんからの経営移譲に備えて、真利さんは一歩ずつ目標に向かって進んでいる。
「地域の担い手として頑張ってほしい」と推薦を受け、新温泉町歴代最年少で農業委員に就任した、村尾賢一さん(33)は、若手農業者の代表として多方面から期待されている。賢一さんは、農業の専門学校を卒業後、アルバイトをしながら畜産の勉強と経験を積んだ。2012年には新規就農総合支援事業の承認を受け、念願だった但馬牛の繁殖経営を始めた。最初は親牛25頭から始め、現在は40頭まで増頭。目標とする「5年間で50頭の達成」は目前となっている。「但馬牛に魅力を感じて繁殖飼育を始めたが、周りを見ると農業従事者の高齢化と、後継者不足が一層深刻な問題となっている。担い手や新規参入者の育成など、農業委員として少しでも役に立ちたい」と抱負を話す。