近年、繁殖和牛経営も多頭化が進み多頭になるほど個体管理が難しくなり、子牛の病気や事故も増える傾向にあり、その対応に苦慮されている方も多いのではないでしょうか。当診療所管内で繁殖和牛を母子合わせて130頭飼育されているA牧場もそのような問題を抱えていた牧場でした。そこで2年前の平成13年7月より子牛の病気や事故を防止するために超早期母子分離法による飼育を開始しました。
その方法は、まず分娩房にて出生した子牛にすぐに粉末初乳製剤を投与しその後5日間は母牛と同居させます。6日目より母子を分離し、子牛は単房(ハッチ)で飼育します。人工哺乳の量は6〜10日目までは代用乳500gを1日3回に分けて与えます。10日目からは徐々に増量し、2ヵ月目までに代用乳1000gを1日2回に分けて与えます。2ヵ月以降は代用乳を500gの1日1回に減量し、スターターや乾草の採食を促します。3ヵ月目で離乳した後、単房からパドック(群飼)へ移し育成用の配合飼料を給与します。
A牧場ではこの方法を取り入れてから、子牛の個体管理がしやすくなり病気や事故が著しく減少し、子牛の発育も良くなりました。「手間と経費は掛かるけれど子牛が順調に育てば十分経営は成り立つよ。また子牛の調子が悪くなってもすぐに発見できるのですぐに治療が受けられる。やっぱり早期発見・早期治療が大事だね」という牧場の方の話を聞き、あらためて個体管理・観察の重要性を痛感しました。皆様も愛情あふれる眼で子牛を見守ってあげてください。