兵庫県立農林水産技術総合センター 普及部 専門技術員 藤澤満彦 水稲は養分の約7割を地力から吸収しています。水田の地力は、土づくりによって向上します。そのためには、有機物の施用とリン酸、ケイ酸などの土づくり資材を補給することがポイントです。 稲わら、緑肥作物などの未熟な有機物を施用する場合、田植えまでに分解を促進しましょう。未熟な有機物が多い中で湛水(たんすい)状態にすると、微生物の増殖により土壌中の酸素が不足し、水稲の根の生長を妨げます。土壌が酸素不足になると有害なガス(硫化水素など)が発生して根を傷めることがあるので注意が必要です。 対策としては、稲わらをすき込む場合、石灰チッ素を10e当たり20`施用して分解を促進します。レンゲをすき込む場合は田植えの3、4週間前までに行い、腐熟を促進しましょう。堆肥はチッ素の分解が緩やかで残効が多いので、過剰に施用するとチッ素が効き過ぎて病害虫の発生につながったり、生育不良になることもあります。10e当たり1〜2dの施用量を遵守しましょう。 土づくり資材では、ケイ酸とリン酸がポイントになります。水稲ではケイ酸の吸収量がチッ素の10倍と多く、10eで100`以上吸収します。特に出穂期の吸収量が多く、この時期に土壌からの供給が不足すると、倒伏しやすくなったり登熟が悪くなります。兵庫県下ではケイ酸の低い圃場もみられるため、このような現象がみられる圃場では、ケイ酸質肥料の施用が有効です。また、火山灰土壌ではリン酸分が不足しやすくなるので、定期的に施用することが必要です。